矢浪 裕志

 昨年暮れに引続き1月14日から18日まで香港の商談会へ行ってきました。メンバーは殆ど同じだったのですが、研究会からの出席者に、時間が取れずに欠席された会員がおりました。実に残念でした。14日朝の成田は雨がかなり多く降っておりました。後で聞きましたら都心でも、いわきでも雪が積もって交通が麻痺したのだそうです。これほど影響が出るとは思いませんでした。24日現在でも横浜の自宅には残雪があります。今回の香港でも日程は充実していて、いろんな現実、現場を案内して頂きました。50枚ほど持っていった名刺が殆どなくなり、色とりどりのわりと派手な名刺に換わりました。

 シンガポール(SP)と香港(HK)の違いを感じたところで書き記します。くるまは日本車が使われているのか、街中を見ると気になります。SPのタクシーは現代製が多く,HKは殆どトヨタ製です。他のくるまは SPでは日本製が半分ほど,HKは6割から7割が日本製に感じました。SPは路上駐車もなく、道端にごみらしい物はありません、政策的に罰金を多く科すことで維持しているようです。HKは日本並みでした。酒類や煙草はSPの税金が高く、食事予算がオーバーして追加費用を徴収されるくらいでした。HKで唯一観光したレパレス・ベイの海水浴場で物売りに出会いました。なぜか日本語で話しかけてきます。どちらも相続税や贈与税などがなく繰越欠損金は無期限使えます。未だにマンションの値段が上がっています、特にHKは中国の資産家が買うようで、高い場所は値段が張るそうです。あまりにも違いすぎて、日本ではこれから上げようとする税金の問題は、頭の痛いところでしょう。対日感情はどちらもすこぶる良いと感じられました。生活が豊かだと気持ちも豊かになれるのでしょう。
商談会は香港貿易発展局内で行われました。翌日中国の深センの工場見学へ行きましたが一国二制度のため入出国の手続きがありました。建物は香港と遜色ない高層化されていますが、工場街は中国だと思わされるものを感じました。帰りの60キロくらい戻るのに3時間半もかかりました。今回香港貿易発展局にはお世話になって、夕食と昼食を二回ご馳走になりました。我社は超長尺FPCと超大型PCBなどの特殊なプリント基板の提案をしてきました。それらの需要があるのかが問題です。たとえ2回の商談会が不調に終わったとしても、一緒に行った研究会仲間同士でこれからの付合いが多くなれば、成功に近づく第一歩になり得るものと期待しております。
ここで大前研一 『 ニュースの視点 』よりのニュウースレターを転載します

 安倍内閣は「経済再生」「復興」「危機管理」に全力で取り組むとし、直近の課題としてはデフレと円高からの脱却による経済の再生と強調。国民一丸となって「強い日本を取り戻していこう」と呼びかけました。日本経済の低迷が始まったのはバブル崩壊の1989年です。この22年間の低迷期間のうち、自民党政権で9割を担っていたので、そもそも自民党が「強い日本を取り戻そう」などと言うことに私は違和感を持ちます。また経済再生という点で言うと、日本の経済学者の言う通りにしていても絶対に上手くいかないということを改めて認識するべきだと思います。これまでに何度も経済学者が提唱するように、景気刺激策としてマネーサプライを増やし金利を調整してきましたが、全く効果はありませんでした。学者というのは過去の学説を元にして今の経済を解説する人であって、今の経済を肌で感じるという感覚が鈍いのだと私は思います。
経済を観察し、それが理論化され学説となるまでの期間を考えると、10年~20年は遅れます。また日本の経済学者を見ていると、米国からの輸入学者が多いのも特徴です。経済原則そのものが変わってしまった時代において、時代遅れの学説に従っていても問題は解決できません。そんな学説に縛られるのではなく、例えば「自分の身の回りにいる70代の人はなぜ貯蓄ばかりしてお金を使わないのだろう?」という発想を持つことが大切だと思います。庶民の暮らしをよく観察し、どうやったらその人たちがお金を使って満足する人生を歩んでいけるのか?ということを出発点として、経済政策を考えるべきです。ところが未だに、政府は公的資金を注入して公共事業をやれば良いという、古い考え方から抜け出せていません。例えば、政府は電機メーカーなどの競争力を強化するため、公的資金を活用する方針を固めたとのことです。リース会社と官民共同出資会社をつくり、企業から工場や設備を買い入れるというものです。この新制度は新政権が制定をめざす「産業競争力強化法」(仮称)の柱となると言うことですが、もはや開いた口がふさがらないレベルです。またこのような昔のやり方に固執してしまうのかと残念に思います。

 私もこの考えに賛意を表します。まだ始まったばかりなので、景気が良くなるのを期待しつつ、安倍政権の危うい舵取りを注視したいと思います。