矢浪 裕志

 今年9月の場合は、世界的な不況の足音が迫ってきたムードで、いよいよクラッシュ前夜となってきたようです。相場の弱さを特に見せつけたのは、先週の動きでした。9月7日、アメリカ政府は、例によってアジア市場が開く前に、ファニーメイ、フレディマックの政府管理というメガトン級の大材料を発表しました。今回の金融危機については、かなり早くの段階から最終的には、公的資金の投入は避けることはできず、いったい自由経済を掲げるアメリカが、それをできるのか?ということが焦点だったわけです。ましてや、この2社は、今回の問題の中心をなす住宅関連の巨人でしたからなおさらでした。大統領選挙の前で、不人気な税金投入は無理と思われていたにもかかわらず、米政府のこの決断は、驚きと共に称賛を持って迎えられました。世界の株式市場において、現在これ以上の好材料はありません。まさに待ちに待った大英断を予想より早めに打ち出してくれた、さすが動きが早いアメリカ政府、と歓迎されたのです。強気派はこれを持って一斉に相場底打ちのレポートを出してきました。ドイツ銀行のアナリストは今回の措置を歓迎して、<ハルマゲドンのシナリオの改める時が来た、米銀行株、住宅関連株は底打ちのシグナル>として相場の大転換を主張しました。ところが、この強気派の目論見とは逆に、株式相場の上昇は何と一日しかもたなかったのです。これは、ある意味では驚くべきことです。3月のベアー・スターンズの救済のときは、その後2か月相場は上がり続けました。また7月の住宅公社2社の政府支援のときは2週間上昇したのです。しかし今回は一日、これだけの大材料にもかかわらずです。現在世界の株式市場においては、これ以上のビッグニュースはあり得ません。それでいてこれだけの動きしかできなかったということは、もはや秋の暴落は避けがたい、と考えるしかないでしょう。

 ニュースの中心は常に金融問題を追いかけていますが、現在、実は実態経済の悪化が世界中ではっきりと目に見えるような形になりつつあるのです。まずは商品相場の激しい下落です。石油ばかりが目につきますが、他の一時産品も激しく下げてきました。代表的な国際商品指数であるCRB指数は、7ヵ月半ぶりの低水準となり、1月下旬以来の水準となりました。7月2日につけた高値から一気に23.8%下げたのです。個別にみると、ニッケルなどは、昨年の高値から7割近い下げになっています。また、荷動きを示す、海運の指標と言われるバルチック指数は6月からわずか3か月で6割近い暴落となっています。おもには中国、インドなど新興国の重要が強かったのですが、ここにきて急激に変化が起きてきています。これを受けてアジアの株は全滅状態となりつつあります。一方でアジア各国の消費者物価指数は軒並み6-8%の上昇となっていて、これに伴うインフレ圧力から自国通貨を守るのに四苦八苦です。また欧州市場も完全に変調を来してきました。8月15日に発表になったユーロ圏の4-6月期のGDPはマイナス成長となりましたが、これは通貨統合前の統計を取り始めてから初めてのことです。9月10日、欧州委員会はユーロ圏の2008年の実質経済成長率を1.3%と、従来の1.7%から大幅に下方修正しました。ルクセンブルグのユンケル首相は欧州議会で、<当初の想定よりも景気の落ち込みは深くなった>と情勢の悪化を認めました。スペインや英国では住宅市場の下落が米国以上に深刻と言われ、今や二・四半期連続のマイナス成長に陥る模様です。IMFも調査のたびごとに、経済見通しを下方修正する有様で、ユーロ、英ポンドも急激に値を下げ始めています。

 また、原油高から、堅調だった資源国の経済もここにきておかしくなってきました。オーストラリアは、景気悪化を受けて、9月2日、政策金利を0.25%引き下げて年7%にすると発表しました。2000年12月以来、約7年ぶりのことです。また、ブラジルやロシアの株も急激におかしくなってきました。特にロシアは酷く、グルジア紛争の影響もありますが、11日にはなんと1298ポイントとなり、5月の高値から、わずか4ヵ月で48%の下げ率となりました。短期で、この様になった株価指数が戻った試しは、世界の株式市場の歴史になく、中国と同じく、完全にバブル崩壊状態とみなければなりません。ルーブルの下げも酷く、ついにロシア中銀は、ルーブル防衛として100億ドルのドル売り、ルーブル買いを実施すると共に、株の買い支えを発表しました。まさに共産主義国家に逆戻りです。4ヵ月前までは、ロシアの政府系ファンドが日本株購入を発表して、日本株の買材料とされたことを思うと、雲泥の差です。わずか4か月でこれほどまで変わるのか? と目を疑いたくなります。まさに経済としては、新興勢力らしい、底の浅さを見る感じです。しかしながら、このロシア、中国、インド、そしてブラジルのBRICS諸国の今後の経済は、想像を絶する悪化となっていくのは必至で、ここから思わぬ不確定要因が飛び出してくるに違いありません。グルジア紛争などは、その最たるもので、今後も要注意です。BRICSが、まさにブリックス(がれき)となって、崩れていくに違いありません。

 このように、世界中どこを見渡しても、景気のいいところはなくなってきました。世界がアメリカの金融、金融と目が行っているうちに、実は、世界景気の方に深刻な影響が表れてきたのです。今までは、日本が悪くても、アメリカ、アメリカが落ちれば、新興国、新興国が落ちれば、資源国という風に、どこか好調なところがあったのですが、いよいよ、世界中のすべてが、同時に不況に陥っていく、という恐慌の様相を呈してきました。波乱の秋相場ですが、新聞の一面を飾る<株価暴落>の記事が踊ることは避けられないでしょう(Kさんレポートの転載ここまで  船井幸雄.comより

 9月29日に我社の得意先であるS社が民事再生法を申請して経営破綻しました。今年の5月の連休後に12億強を投資して新工場に移転して稼動するはずが、5ヶ月をまたないでこの結果です。見通しの甘さと受注減なのでしょう。我社も数百万円損害を被りました。大きな痛手です。説明会によりますと、設備にかかった電源の設置や機械装置の移動費用も未払いで、通常の取引相手ではないスポットの協力会社に多大な不良債権を発生させていました。
沢山の協力会社に怨まれるような仕打ちでは、今後の再生に大きな問題が生じるでしょう。
それと同時に200人からの中堅企業がやはり民事再生法の申請、N社は多層板のシールド板を専門にしていて秋田に大きな工場を持っています。聞く所によると受注が5割以下になっていたようです。この様から見ても各会社は安値の受注競争が止まらず利益を圧迫して体力の消耗戦になっています。まだまだ続くとみていた方が良いでしょう。

 そのような時期にも関わらず株式会社日本政策金融公庫(旧国民生活金融公庫)から低金利の融資を数千万借ります。大丈夫でしょうか今頃、経営革新計画を実行するのが今期の目標になっています。そのまま実行することにしました。